あがり症や対人恐怖といった社会不安は現代特有のものですか?

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あがり症や対人恐怖といった社会不安は現代人に多いと聞きます。この手の症状は現代特有のものなのでしょうか?



あがり症や対人恐怖といった社会不安は何も現代に限った話ではありません。古代ギリシャの有名な長編叙事詩にも記述が残っていますし、18世紀の著名な思想家も書き記しています。





他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.20より


 <社会不安>は、何も現代に限った問題ではない。なんと、古代ギリシャの有名な長編叙事詩、ホメロスの『オデュッセイア』にもそれに関する記述が残っている。オデュッセウスは、王との謁見に気おくれを感じ、城門の前でなかに入るのをためらったというのだ。

 あの勇敢な戦士でさえ、権力者を前にして気おくれを感じるというのだから、私たちが社長や上司の前で緊張してしまうのも無理がないことだろう。


 本書によれば、ホメロス以降も現代に至るまで、文学作品におけるこの種の記述は枚挙にいとまがないといいます。18世紀の思想家ジャン=ジャック・ルソーも、著書『告白』にこんなことを書き記しています。

 《徒弟時代、私はよく菓子や果物を買いに行った。ところが菓子店の前にやってくると、店の女たちに笑われているような気がしてどうしてもなかに入れない。果物店の前でも、そばにいる若者たちにじろじろ見られているようで、思いきって買う勇気がでないのだ》

 また、19世紀の詩人ボードレールは、友人についてこう語っています。

 《私の友人のひとりは、人に見られると目を伏せてしまうほど内気な人間だ。だからカフェに入るにも、劇場で入場券を買うにも、ありったけの勇気を絞り出さなければならない》

 こうやって見てみると、あがり症や対人恐怖といった社会不安はかなり昔から存在していたということがわかります。

 ただ、別のよくあるご質問で「『あがり症』という性格だから治らない、病気ではなく個人の資質だと思っている人が圧倒的に多いので、社会不安障害が発症しても受診しません。これが、早期発見・早期治療をはばむ第一の問題点である。という話を紹介したことがありますが

 かつては「病気ではなく単なる性格である」や「病気ではないので治療はできない」などといった考え方が主流でした。これらの社会不安が精神疾患・病気として認知されるようになったのは、つい最近の話です。