あがり症に悩まされています。特に大勢を前に何かを披露するのが特に苦手です。周りの皆はそんな状況をなんなくこなしているように思えて、私は強い劣等感を感じます。私のように緊張や不安を感じる人間は特別で、ごく少数に限った話なのでしょうか? |
大勢の前で話をする、プレゼンをする、パフォーマンスを披露する。この時、強い緊張や不安を感じることは決して特別なことではありません。ごく自然なことです。名優や名演奏家、スポーツ選手も普通の人と同様にあがるものです。
他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.28より 私たちは普通、名優や名演奏家ともなれば、舞台の上であがったりはしないだろうと考える。だが、それはちがう。「私は一度もあがったことなんかないわ」と誇らしげに言った新人女優に対し、サラ・ベルナール(※)が返した言葉は有名である。「あなたも実力がつけば、あがるようになるわよ」。舞台に上がる前、自分でも抑えきれないほどの不安を感じる名優はたくさんいるのだ。
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※サラ・ベルナール(1862年-1922年)はフランスの舞台女優。フランスのベル・エポックを象徴する大女優として知られる。
私の話で恐縮ですが、私自身も過去にこういった経験がありました。確か小学生の時だったと思いますが、運動会の演目で組体操がありました。男子であれば(一部の女子も)組体操の経験があると思います。私はこの“組体操という不思議な演目”の前半にこなさなければならない“倒立”が苦手でたまりませんでした。
日本の小学校では運動会(体育祭)前になると、その他多くの授業を潰して、この一年に一度のイベントに向けて精を出します。私は練習時間に何度も苦手な倒立にチャレンジしてみるも、その成功率はかなり低く、本番前日になってもいっこうに上達しないことに強い不安と緊張を感じていました。他の誰もが成功できる倒立。本番で一人だけ失敗しまえば、かなり目立ちます。家族や友人、友人の家族、その他大勢の前で恥をかくことになります。
「もう、明日の運動会が中止になってしまえばいいのに」。私はそう強く思ったことを覚えています。運動会当日の朝は極度の緊張と不安で本当に吐きそうでした。本番当日、午前中から空模様が怪しく、次第に降り始めた雨に「運動が中止になるのではないか?」と私は小躍りしたことを覚えています。ただ、運動会は種目を減らして雨の中の開催を決定。組体操は演目の中に残されてしまっていました。
そして本番。激しい不安と緊張にさらされながら、なんとか倒立を決めた時のあの解放感、安心感を私は今でも忘れることができません。
本書でも紹介されていますが、重要な場面を前にあがってしまうのはそれほど珍しいことではありません。俳優や歌手にかぎらず、スポーツ選手も同じです。1992年、バルセロナ・オリンピックの女子400メートルで金メダルを獲得したマリー=ジョゼ・ペレックは、競技直前にロッカールームで緊張のあまり吐いてしまったといいます。
大勢の前で話をする、プレゼンをする、パフォーマンスを披露する。この時感じる緊張や不安は名優や名演奏家、スポーツ選手も普通の人と変わらないのです。